自動銃の回転不良が起きる原因と次弾を確実に撃つためのメンテナンス方法

自動銃の回転不良が起きる原因と次弾を確実に撃つためのメンテナンス方法

自動式散弾銃・ライフル銃は、その構造上、どうしても回転不良(ジャム)のリスクがつきまといます。しかし、その原因の多くは、「故障」ではなく「メンテナンス不足」にあることがほとんどです。

この記事では銃砲店の見地から、自動銃が回転不良を起こすメカニズムとその解決策としてのメンテナンス方法を解説します。

自動銃が回転不良を起こす主な原因

自動銃が回転不良を起こす主な原因

画像参照:レミントン M1100マグナム 12-30”

自動銃が次弾を装填しない、あるいは排莢しないトラブルには、明確な物理的な原因があります。ここでは、特に多い3つの原因について解説します。

原因① ガス・ピストン周辺のカーボン堆積

自動銃のトラブルで最も多い原因は、ガス圧を作動エネルギーに変換する「ガス・ピストン」や「ガス孔」に堆積した火薬の燃えカスです。

自動銃、ガスオート式は、発射時のガスの一部を銃身の小さなガス孔から取り込み、ピストンを後退させて機関部を作動(ロッキングを解除する)させる仕組みになっています。しかし、このガス孔やピストン周辺に汚れが硬く固着してしまうと、部品の滑りが悪くなったりして、薬莢を排出する十分な力が得られなくなります。

「銃身内は毎回掃除している」という方でも、ガス流入部(ピストンやスライドバー)部分まで分解清掃していないケースがよく見られます。特に湿度の高い日や、燃焼効率の悪い装弾を使用した後は、粘度の高い汚れが固着しやすくなります。回転不良が起きた際は、まずガス孔に汚れや異物が詰まっていないか、ピストンの動きがスムーズかを確認しましょう。

原因② 装弾の圧力不足

銃本体に異常がない場合、使用している装弾のガス圧が、必要なエネルギーに達していない可能性があります。

自動銃は、一定以上の火薬の燃焼ガス圧や反動を利用して作動します。しかし、射撃練習用の24g装弾や、反動の軽い装弾を使用した場合、重い遊底を最後まで押し戻すパワーが足りず、排莢不良を引き起こすことがあります。

例えば、マグナム装弾も撃てるような頑丈な設計の自動銃で、クレー射撃向け24g等の軽い装弾を撃つと、回転不良が頻発することがあります。これは銃の故障ではなく、単純なエネルギー不足です。

また、狩猟用装弾でもメーカーによって火薬の燃焼特性が異なるため、装弾と銃の相性も考慮する必要があります。不調が続く場合は、装弾の銘柄や重さを変えてみるだけで改善するケースも少なくありません。

原因③ 寒冷地におけるオイルの硬化

冬場の猟場において意外な落とし穴となるのが、潤滑オイルの「塗りすぎ」あるいは「種類の選定ミス」による作動不良です。

金属同士の摩耗を防ぐためのガンオイルですが、気温が氷点下になる環境では、オイルの粘度が高くなり、逆に抵抗となって作動を妨げることがあります。特に、一般的な鉱物油系のオイルは低温で硬化しやすい性質を持っています。

北海道や山間部の猟場で、「朝一発目は出るが、二発目が排莢されない」という現象はこれに当たります。暖かい場所でメンテナンスした際にたっぷりと塗ったオイルが、現場の寒さでワックス状に固まり、スプリングやボルトの動きを鈍らせてしまうのです。

冬場のメンテナンスでは、耐寒性のあるオイルを使用するか、極薄く塗布した後に乾いた布で拭き取るようにしましょう。

現場で自動銃の回転不良が起きた時の緊急対処法

現場で自動銃の回転不良が起きた時の緊急対処法

猟場や射撃場で回転不良が起きた際、焦りは禁物です。安全を最優先した手順を徹底してください。

絶対やってはいけないこと

回転不良や不発が起きた際、絶対に銃口を覗き込んだり、すぐに薬室を開放してはいけません。

引き金を引いても弾が出ない場合、装弾の不良による「遅発」の可能性があります。遅発とは、雷管が叩かれてから火薬に引火するまでに時間差が生じる現象です。もし銃口を覗き込んだ瞬間に弾が発射されれば、取り返しのつかない事故になります。

猟銃等取扱読本や射撃場の安全規則では、不発や違和感があった場合、「銃口を安全な方向に向けたまま、10秒〜30秒程度待機する」ことが推奨されています。焦ってすぐにボルトを操作すると、遅れて爆発した際に薬莢が破裂し、射手が怪我をする恐れがあります。弾が出なくても、銃はまだ発射される可能性があるという前提で扱い、十分に時間を置いてから脱包操作を行ってください。

自動銃の回転不良を未然に防ぐ日頃のメンテナンス方法

自動銃の回転不良を未然に防ぐ日頃のメンテナンス方法

トラブルのほとんどは自宅でのメンテナンスで未然に防げます。ここでは特に重要なポイントを解説していきます。

回転不良防ぐメンテナンスのポイント

回転不良を防ぐには、「磨く」だけでなく、「消耗品のチェック」と「正しい注油」が鍵となります。

自動銃は多くの部品が連動して動く精密機械のため、単に汚れを落とすだけでなく、ガス漏れを防ぐOリングの劣化や、リターンスプリングのヘタリを点検する必要があります。これらが劣化していると、どれだけ掃除してもガス圧が逃げてしまい、回転不良は直りません。

具体的なメンテナンスのポイントとして、以下の2点を意識してください。

  1. ガスポートの貫通確認: 専用のクリーナーを使い、穴が狭くなっていないか確認します。
  2. 余分な油の除去: 注油後は、必ずエアーダスターやウエスで「余分な油」を飛ばしてください。油の塗りすぎは汚れの原因になります。

上記2点のメンテナンスで解決しない場合はスプリングやゴム部品の交換時期かもしれません。ゴム部品の交換やオーバーホールは無理に触らず、銃砲店にご相談ください。

まとめ

自動銃の回転不良は、以下の3点を見直すことで大部分が解決します。

  1. ガスシステムの徹底的な清掃
  2. 使用する装弾と銃の相性の確認
  3. 気温に適したオイル管理と消耗部品の点検

特に狩猟歴3〜5年目の方は部品の消耗や汚れの蓄積が出始める時期でもあります。

もし、「掃除・注油をしたけれど調子が戻らない」という場合は、ぜひお気軽に当店へお持ち込みください。プロの目で原因を特定し、安心して引き金を引ける状態に整備いたします。

狩猟のギモン、YouTubeでお答えします

シューティングサプライでは、YouTubeチャンネルも運用しています。

「鹿を仕留める時のコツはある?」
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