狩猟現場で「ジャム」はなぜ起きる?種類と原因、現場で行うべき対処法

狩猟現場で「ジャム」はなぜ起きる?種類と原因、現場で行うべき対処法

忍び猟でついに獲物を捉えた瞬間、装弾がスムーズに装填されずガチャガチャ音を立ててしまい、絶好の機会を逃してしまった経験はありませんか?あるいは射撃場での練習中に次弾が送り出せなくなるといったこともあるのではないでしょうか。

これらは一般的に「ジャム(Jam)」と呼ばれる現象です。 一言にジャムと言っても、「弾が薬室に入らない」「空薬莢が出てこない」など、その原因や症状は様々です。

これらを正しく理解することは、獲物を確実に捕獲するためだけでなく、暴発や銃身破裂といった重大事故を防ぐためにも不可欠です。

今回は、自動銃を使用するハンターに向けて、ジャムの正体とメカニズム、そして現場で冷静に対処するための解消法について解説します。

銃で起きるジャムの主な種類は3つ

銃で起きるジャムの主な種類は3つ

銃における「ジャム」とは、初弾装填がうまくできない、発射後の空薬莢が上手く排出されない、または次弾の装填などの動作サイクルが止まってしまう「機能停止」の総称です。ここでは、どんな形式の散弾銃やライフルでも起こりうる主要な3つの種類について解説します。

1. 装填不良:弾薬が薬室に正しく送り込まれない現象

装填不良とは、マガジンから押し出された弾薬が、何らかの原因で薬室に完全に収まらない状態を指します。

手動銃の場合は自身の手でボルト操作しますので、ボルト操作スピードが適切ではないことがまず1点目です。次にマガジンスプリングのテンションが強すぎて装弾自体がすごく上方向に力がかかっている状態にも同様の現象が発生します。そのほか、ハンドロードしている装弾で弾頭の形状と銃の薬室入口の形状のマッチングが上手くいかない場合もあります。

自動銃の場合は通常、発射時のガス圧や反動を利用してスライドやボルトが後退し、戻る力で次弾をすくい上げて薬室へ送り込みます。このサイクルの中で、マガジンのバネが弱っていたり、弾薬の滑りを良くする「フィードランプ」が汚れていたりすると、弾が途中で引っかかってしまいます。

狩猟においては、機関部を開放状態のまま藪漕ぎしてしまうことで、機関部に枝葉や異物が入り込む場合に起きやすくなります。

2. 排莢不良:発射済みの空薬莢が銃の外へ排出されない現象

排莢不良とは、発射後に空薬莢がボルトと一緒に引っ張られずに銃の外へ排出しないことで、銃内部に残ってしまう現象です。

正常な動作では、スライドやボルトについている「エキストラクター(排莢フック)」が薬莢のリムを掴んで引き出し、「エジェクター」にぶつけて外へ弾き飛ばします。しかし、火薬の量が不十分でスライドが最後まで後退しきらなかったり、エキストラクターの爪が摩耗して薬莢を掴み損ねたりすると発生します。

アクション映画などで、撃っている最中に自動銃の横から空薬莢が飛び出なくなるシーンがありますが、これが排莢不良です。実猟では、メンテナンス不足による錆や汚れ、あるいは極寒冷地でオイルが固まり、ボルトの動きが鈍くなることが主な原因となります。

3. 回転不良:スライドやボルトの往復運動が正常に行われない現象

回転不良とは、発射サイクルである「撃発→後退→排莢→次弾装填→閉鎖」の一連の動きがスムーズに完了しない現象全般を指します。

手動銃の場合は1のお話と同様になります。

自動銃は、精密なバランスで設計されています。しかし、使用する弾薬の火薬量が規定より少なかったり、銃のメンテナンス不足で可動部のオイルが切れて摩擦が増えていたりすると、スライドやボルトが中途半端な位置で止まってしまいます。また、射手の構え方が弱く、反動を腕で吸収しすぎてしまうことも、エネルギーロスに繋がり回転不良を引き起こします。

また、ライフルで射手の構えが甘く、強烈な反動を体全体で受け流しすぎてしまうと、銃本体が後退することで、ボルトの相対的な後退スピードが落ちて回転不良を引き起こすこともあります。

ジャムの種類別の名称と発生メカニズム

ジャムの種類別の名称と発生メカニズム

ここでは具体的なジャムの名称とメカニズムについて解説します。

ストーブパイプ

ストーブパイプとは、排莢不良の一種で、排出しきれなかった空薬莢がスライドと銃身の間に縦向きに挟まってしまう現象です。

名前の由来は、挟まった薬莢がまるで屋根から突き出た「薪ストーブの煙突」のように見えることから来ています。

主な原因は、スライドの後退スピード不足や、エジェクターの不具合です。また、射手が銃をしっかり固定できていない場合にも、反動エネルギーが逃げてしまい発生しやすくなります。一般的な猟銃のほとんどは上方向に排莢せず、横方向に排莢するものが多いので、「ストーブパイプ」というよりも、「マフラーサイド出し」が適しているかもしれませんね(笑)

ダブルフィード

ダブルフィードとは、薬室中にまだ排莢されていない空薬莢や弾が残っているにもかかわらず、次弾が無理やり送り込まれ、2つの物体が噛み合ってしまう現象です。

非常に厄介なトラブルであり、主な原因は「エキストラクターの破損」で薬莢を引き出せなかった場合や、マガジンリップ(弾を保持する口)が変形し、一度に2発の弾が飛び出してしまう場合に起こります。

この状態になるとボルトが完全にロックされ、引くことも戻すことも困難になります。通常のボルト操作では解消できず、マガジンを外すなどの手順が必要になるため、現場での即時復旧は困難です。部品の破損や変形も疑われる深刻なトラブルと言えます。

スクイブロード

スクイブロードとは、発射された弾丸が銃身の中で詰まって止まってしまう、最も危険な現象です。

古い弾薬だったりや、湿気で火薬が劣化していたりした場合、雷管の爆発力だけで弾頭が銃身を通り抜けるほどの力がないため途中で止まってしまいます。

発射音が「ポフッ」「パスッ」という頼りない音になるのが特徴です。もしこれに気づかず、次弾を装填して発射してしまうと、後続の弾が詰まった弾に衝突し、銃身破裂を引き起こします。

射手が大怪我をする重大事故に繋がるため、「音がいつもと違う」「反動が軽い」と感じたら、絶対に次弾を撃たず、直ちに脱砲して銃身内を確認する必要があります。

ジャムを解消する復旧手順

ジャムを解消する復旧手順

射撃場や猟場でジャムが発生した際、安全に復旧するための基本手順を紹介します。これは実銃のタクティカル・トレーニングでも採用されている基本動作です。獲物が目の前にいても、まずは銃口管理を徹底してください。

1. マガジンを叩き込む

まずはマガジンの装着不良が原因でないかを確認するため、マガジンの底を強く叩き上げ、確実に装着させます。手動銃(デタッチャブルマガジン)において、マガジンのセットが甘いことは装填不良の最大の原因の一つです。

2. スライドを引く

次にボルトを勢いよく一番後ろまで引きます。これにより、挟まっていた薬莢を弾き飛ばしたり、不発弾を排出したりして、新しい弾を薬室へ送り込みます。

3. 射撃または状況確認:

ボルトが戻ったら、即座に撃つのではなく、状況を再確認します。

 もし上記の手順で直らない場合、前述の「ダブルフィード」の可能性があります。その場合は、銃口を安全な方向に向けたまま、「ボルトをロックして固定」→「マガジンを抜く(フロアプレートを開放)」→「ボルトを数回前後させて詰まった弾を排出」という複雑な手順が必要になります。

まとめ

狩猟における銃の「ジャム」は、単なる機械の故障ではなく、整備不良や弾薬の選定ミス、操作ミスなど様々な要因が重なって起こる現象です。

装填不良・排莢不良といった種類の違いや、スクイブロードのような危険な兆候を理解しておくことで、現場でのトラブル対応力は格段に上がります。 

猟期前のメンテナンスはもちろん、射撃場での練習時にジャムが起きた際は「なぜ動かないのか」という構造的な理由を確認する癖をつけましょう。道具への深い理解が、結果として安全な狩猟と確実な猟果に繋がります。

狩猟のギモン、YouTubeでお答えします

シューティングサプライでは、YouTubeチャンネルも運用しています。

「鹿を仕留める時のコツはある?」
「銃の値段が違うと何が違うの?」
「そもそも銃砲店の店内ってどんな感じなの?」

上記のような、実際のお客様から寄せられた質問に対し、動画でお答えしています。他のチャンネルには中々ない、現場のギモンも解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

youtubeチャンネル「シューティングサプライ渡辺店長」はこちら

コメントを残す