銃の寿命はいつ?買い替えのサインと後悔しない判断基準をプロが解説

銃の寿命はいつ?買い替えのサインと後悔しない判断基準をプロが解説

お使いのライフル銃で「回転不良や排莢不良が増えてきた」 「メンテナンス中に錆びを見つけた」―そう感じることはありませんか? 特に長年使用している愛銃なら手放すタイミングに迷うものです。

しかし、銃は金属と火薬を扱う道具であるため、判断ミスで思わぬ事故に繋がるリスクもゼロではありません。

この記事では、銃の寿命を見極めるポイントと、修理か買い替えかを判断するための基準を、ライフル銃の専門家として分かりやすく解説します。

銃の寿命は「年数」よりも「発射数」と「メンテナンス」で決まる

銃の寿命は「年数」よりも「発射数」と「メンテナンス」で決まる

銃の寿命を一概に定義することはできませんが、銃の寿命を決定づける要素は、経過年数よりも「実射数」と「メンテナンスの質」にあります。

銃は工業製品であるため、金属疲労や摩耗は避けられません。しかし、年間数発しか撃たないハンターの銃と、毎週クレー射撃で数百発撃つシューターの銃では、機関部にかかる負荷が天と地ほど異なります。また、発射数が少なくても、メンテナンス不足による錆びびや腐食は、銃の寿命を縮める要因となります。

種類別に見る寿命と耐久性の特徴

銃の種類によって、負荷がかかる場所や寿命の訪れ方は異なります。ここでは代表的な銃種ごとの耐久性の特徴を解説します。

散弾銃(上下二連・自動銃)の耐久性と弱点

散弾銃(上下二連・自動銃)の耐久性と弱点

新銃 モスバーグ M940JM-Pro 12‐24”交換チョーク式

散弾銃は比較的寿命が長い銃種ですが、構造によって摩耗するポイントが異なります。一般的に上下二連は「接合部」、自動銃は「回転部」が弱点となります。

散弾銃の銃身自体は滑腔があるため、弾による摩耗は緩やかです。しかし、発射時の衝撃は機関部に集中します。 上下二連銃の場合、開閉を繰り返すヒンジピンや、閉鎖を担うロッキングボルトが摩耗します。

二連銃は寿命が近づくと、「折った際の抵抗が無い」「閉じた状態で銃身がガタつく」「閉鎖しても力を加えると勝手に開放してしまう」といったことが生じたりします。

自動銃の場合、薬莢を排出・装填する機構の異常や、各部の亀裂等が寿命のサインです。過去に強装弾を撃ちすぎた自動銃のマガジンチューブが根本から折損し、修理不可の為入れ替えになったケースもありました。

数万発撃っても耐える頑丈な作りですが、可動部のガタや作動不良が頻発し始めたら、部品交換か買い替えの検討時期と言えるでしょう。

ライフル銃の銃身寿命

ライフル銃の銃身寿命

新銃 ティッカT3x スーパーバーミントRTG

ライフル銃の寿命は、各部が壊れる前に銃身のライフリングの寿命が先に来ることがほとんどです。

ライフルは散弾銃よりも遥かに高い圧力と熱が発生するため、薬室のすぐ先のスロート部からライフリングのはじめの部位が発射時の高熱ガスによって焼食され、ライフリングが焼損していきます。これをエロージョンといいます。これにより弾頭の保持が甘くなり、命中精度が低下します。

銃口部も著しいキズがあった場合はその傷による弾頭の動きが変わることで命中精度が悪化します。(クラウン部のキズ)そのほか、銃口に異物が詰まっていることに気づかないで発射してしまい銃身がドーナツ状に膨れてしまう(バルジリング)も命中精度を著しく落とす要因です。

機関部は無事でも、狙ったところに中たらないライフルは本来の役割を果たせません。集弾率の低下を感じたら、ボアスコープでの点検が必要です。

空気銃(エアライフル)のOリング・パッキンの劣化

空気銃(エアライフル)のOリング・パッキンの劣化

FXエアーガンズ・エアアームス・コメタ製エアライフル

PCP式空気銃の寿命は、金属パーツではなくゴム製のOリングやパッキン、レギュレーターによって変わります。「エア漏れがする」「弾速が安定しない」といった症状は、レギュレーターやパッキンの寿命かもしれません。

PCP式空気銃は高圧空気を長時間保持するため、ゴム部品には常に強い負荷がかかっています。ゴムは使用しなくても経年劣化する消耗品のため、金属製の銃よりもメンテナンスサイクルは短くなるのです。

また、高圧タンク自体も製造から15年程度で交換が必要な場合や、法令に基づく点検が必要になる場合があります。エアライフルは精密機器に近い性質を持っているため、パワーが出ない、エアが抜けるといった症状はシール類の寿命が原因です。放置すると大きな故障に繋がります。

狩猟向けPCPエアライフルは特に定めはありませんが、競技用PCPエアライフルのエアシリンダーは使用年数が定められてます。使用年数を過ぎてしまった場合はシリンダー交換、その銃のシリンダーがもう手に入らない場合は入れ替えとなってしまいます。

銃の買い替えを検討する寿命のサイン3つ

安全に関わる症状が出たら使用を中止すべきです。特に以下の3つのサインが出た場合は、修理よりも買い替えを強くおすすめします。

  1. 銃身内部の深い錆び: 表面の錆びびは落とせますが、銃身内部に窪みができるほどの錆びは危険です。
  2. 機関部の深刻な亀裂:機関部やボルトに亀裂が入っている場合、使用を中止すべき危険な状態です。
  3. 交換部品の供給終了:古い輸入銃でよくあります。代替品も見つからない場合、その銃は機能を維持できません。特注で作ることも可能ですが、コストが割高です

重度の錆びや亀裂があれば無理に使わず、買い替えるタイミングと捉えましょう。

銃の寿命を縮めてしまうNGな取り扱い方法

銃の寿命を縮めてしまうNGな取り扱い方法

無意識に行っている保管方法や取り扱いが、実は銃の寿命を縮めている可能性があります。日本の高温多湿な気候や、誤ったメンテナンス知識は、銃の大敵である錆びと金属疲労を加速させるからです。

まず、ガンケースに入れたままの保管は避けましょう。ケースに入れっぱなしにしておくと、湿気が銃に移り、一晩で錆びることもあります。 

次に、銃身内に油を残したままの発射も危険です。「油浸し」は保管時は良いですが、撃つ前には必ず拭き取る必要があります。油が残っていると異常高圧になり、銃身が膨らんだり破裂したりする原因になります。 最後に、過度な空撃ちです。特に空撃ちケースを使わない空撃ちは、撃針やその受け皿を痛め、金属疲労による折損を招きます。

「ケースから出してガンロッカーへ」「撃つ前は脱脂」「空撃ちは模擬弾を使用」を徹底するだけで、銃の寿命は数年単位で伸びます。

「修理」か「買い替え」か迷った時の判断

「修理」か「買い替え」か迷った時の判断

修理すべきか、買い換えるべきか迷った際は、「コスト・安全性・将来性」の3軸で判断することをおすすめします。以下のフローで考えてみてください。

  1. 安全性は確保できるか:銃身腐食や機関部割れがある場合は、即買い替えです。安全であれば次へ進みます。
  2. 修理見積もり額は適正か:修理費が、同等の中古銃や新品価格の50%を超えるようであれば、買い替えを推奨します。修理費が安ければ次へ進みます。
  3. 部品はすぐ手に入るか:取り寄せで半年〜1年待ちになる場合は、猟期を逃してしまわないように買い替えの検討が必要です。在庫があれば修理をおすすめします。
  4. その銃を数年後も使えるのかどうか:体力的に重い、最新のスクープが載らないといった場合は、買い替えのタイミングです。

「直せば使える」だけでなく、「直す価値があるか」「直して満足できるか」を天秤にかけて修理か買い替えを選択しましょう。

まとめ:違和感を感じたらプロに相談

銃は定期的なメンテナンスが不可欠な道具です。

もし今、お手持ちの銃の動作に違和感を感じていたり、錆びびやガタつきが気になっていたりするなら、それは銃からのサインかもしれません。だましだまし使うのは、排莢不良による獲物の取り逃がしだけでなく、暴発や破損といった重大な事故に繋がるリスクがあります。

ご自身の銃が修理で蘇るのか寿命なのかの判断に迷われたら、ぜひお近くの銃砲店にご相談ください。

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