
「あと少し倍率があればバイタルを外さなかったのに……」「薄暗い朝夕のマズメ時、獲物がよく見えずに狩猟鳥獣か判別できない」 ―狩猟の現場で、そんな経験をしたことはありませんか?
獲物を正確に判別し、確実に急所を射抜くために不可欠なのが「ライフルスコープ」です。しかし、いざ買い物をしようとすると、相場は数万〜数十万円と価格レンジが広く、一体何を基準に選べばいいのか迷うハンターも少なくありません。
そこで今回は、実猟におけるスコープ導入の絶対的なメリットから、価格差を生む「焦点面」や「構造」の違い、そして信頼できるスコープのブランドまで徹底解説しますあなたの猟銃に最適なスコープを見つけ、次の猟期での成果を確実なものにしましょう。
【シーン別】狩猟でスコープを導入する絶対的なメリット
狩猟においてスコープを導入することは、単に「遠くが見える」だけでなく、安全狩猟と鳥獣保護法を遵守する上でも大きな意味を持ちます。
遠距離時に使用するメリット
スコープ最大のアドバンテージは、側倒できる急所を拡大して狙えることです。
肉眼やオープンサイトで50m〜100m先の獲物の心臓や肺を狙うのは、的が小さすぎて非常に困難になります。
スコープ越しに狙うことで、ある程度の距離があっても獲物の体の部位をピンポイントで狙撃できます。 急所に着弾させてなるべく苦しませずに獲るためにも必要な道具です。
誤射を防ぐメリット
スコープの運用は、獲物の識別や誤射の防止のためにも欠かせません。
狩猟の現場では、双眼鏡に持ち替えている時間がない急場面でも、スコープ越しに獲物を視認し、そのまま即座に射撃する体制に入れます。
スコープ越しに獲物の姿を捉えれば、目の前の動物が確実に狩猟対象鳥獣であるかどうかも見極められます。
さらに、誤射事故を未然に防ぐ安全対策としても欠かせません。引き金を引く直前、獲物の向こう側に道路や建物、あるいは人がいないかを確認するのは、ハンターの義務です。
肉眼では見落としがちな背景のリスクも、スコープを通して拡大視認することで明確に判別できます。単なる照準器としてだけではなく、最終的な安全確認を行うためにも、スコープは重要な役割を担っているのです。
ライフルスコープとドットサイトの比較

巻狩りか、忍び猟かによっても選択肢は変わります。それぞれの特性を理解しましょう。
| 項目 | ライフルスコープ | ドットサイト |
|---|---|---|
| 倍率 | あり(1倍〜12倍) | なし(等倍) |
| 得意距離 | 中〜遠距離(50m〜150m超) | 近〜中距離(0〜50m) |
| 照準速度 | バイタルをピンポイントで狙える | 素早い照準が得意だが精密さは劣る |
| 視界 | 狭い | 広い |
| 用途 | 忍び猟、流し猟、遠距離射撃 | 近距離の巻狩り、走る獲物への対応 |
走っているイノシシを至近距離で撃つような「巻狩り」であれば、視野が広く両目を開けて狙えるドットサイトが有利な場合もあります。
一方で、北海道のエゾシカ猟や、本州での忍び猟など、止まっている獲物を確実に仕留める場面では、圧倒的にライフルスコープが有利です。最近は近距離の巻狩りと中距離の狙撃を両立しやすい1倍から6倍程度まで変更できるショートスコープが、スラッグ弾運用のハンターに使われています。
実銃用スコープの特徴と値段による違い

ライフルスコープの価格差は、内部構造の複雑さや製造コストの違いに起因しています。特に「焦点面の位置」と「チューブ径」は、価格と性能を決定づける重要な要素です。
1. 「第1焦点面」と「第2焦点面」の構造差
スコープには、レティクル(十字線)の見え方に2つのタイプがあり、これが価格に大きく影響します。
第2焦点面
- 特徴: 倍率を変えても、視界の中のレティクルの大きさは変わらないまま、ターゲットだけが拡大・縮小されます。
- 価格: 構造的に製造が容易であるため、比較的安価に作ることができます。
- メリット: 低倍率でもレティクルが細くなりすぎず視認しやすいため、多くの狩猟用スコープで採用されています。
第1焦点面
- 特徴: 倍率の変更に合わせて、レティクルも一緒に拡大・縮小します。
- 価格: ズームに合わせてレティクルサイズを正確に変化させる精密な構造が必要なため、高価になります。
- メリット: どの倍率でも目盛りの縮尺が一定のため、遠距離射撃での着弾補正計算に適しています。
2. チューブ径によるレンズ性能の差
スコープのチューブ径も、価格と性能に関わるポイントです。 チューブ径が太くなるほど、内部に大きなレンズを組み込む設計が可能になるため、高い光学性能を発揮する傾向にあります。
猟用途に合わせたライフルスコープの選び方とおすすめブランド4選
1. 高コスパな国産ブランド:Vixen(ビクセン)

天体望遠鏡メーカーとして有名な日本の企業です。狩猟用スコープとしても非常に評価が高く、特にこれから狩猟を始める方の最初の一本として高い人気を誇ります。
日本のメーカーらしく、日本人の目に馴染むクリアな視界と、実銃の衝撃に耐える十分な剛性を持ちながら、海外の高級ブランドに比べて価格が抑えられているのが魅力です。万が一の故障時にも国内で迅速なサポートが受けられる安心感は、実用品として大きなメリットと言えるでしょう。
2. 世界が認める最高峰の技術と耐久性:ライト光機製作所

画像引用:ライト光機 ライフルスコープ 2.5-15×50mm
一般の知名度はそこまで高くありませんが、知る人ぞ知る長野県の光学機器メーカーです。
自社ブランドやOEM製品として流通するスコープは、極めて高い耐久性と精度を誇ります。過酷な環境下でラフに扱ってもゼロインが狂いにくい堅牢な作りは、岩場や藪の中を歩き回る日本の狩猟スタイルにおいて頼もしい相棒となります。「質実剛健」を求めるハンターに選ばれるメーカーです。
3. 圧倒的な解像度を誇る「光学の王様」:Carl Zeiss(カール・ツァイス)

画像引用:カールツァイス ライフルスコープ
カメラレンズや顕微鏡でも世界最高峰の知名度を誇るドイツのブランドです。ツァイスのスコープ最大の特徴は、他を圧倒する「レンズの明るさ」と「コントラストの高さ」にあります。
獲物が動き出す「日の出直後」や「日没直前」の薄暗いマジックアワーにおいても、ツァイスのスコープであれば獲物の輪郭をくっきりと捉えることができます。価格は高価ですが、一生モノの品質と、悪条件下での決定的なチャンスを逃さない性能を求めるならば、最終的な到達点となるかもしれません。
4. 完全オーダーメイドの国産ハイエンド:March(マーチ / ディオン光学技研)

画像引用:マーチ ライフルスコープ
長野県のディオン光学技研が製造する、安心の国産ブランドです。Marchの代名詞とも言えるのが「圧倒的な倍率比」で、8倍比や10倍比、あるいはそれ以上の幅広いズーム域を一本でカバーする技術力は世界でも高く評価されています。
また、ベンチレスト射撃競技やロングレンジハンティングはもちろん、近距離主体のショットガン向けまで、あらゆるシーンに対応するラインナップの豊富さも魅力です。
特筆すべきは、モデルやレティクル形状、ダイヤルの種類などを自分好みに組み合わせられる「オーダーメイド」システムを採用している点です。自分の狩猟スタイルや銃にフィットした、世界に一つだけのスコープを手に入れることができるでしょう。
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まとめ
狩猟におけるスコープは、獲物の急所に確実に当てるためだけでなく、誤射を防ぐためのアイテムでもあります。
価格の違いは焦点面の構造や解像度、反動に耐えうる強さに直結します。
獲物を半矢にして悔しないためにも、今回ご紹介したVixenやMarch、ツァイスといった確かなメーカーのスコープの購入もぜひ検討してみてください 「良いスコープ」は、あなたの狩猟をより豊かなものに変えてくれるはずです。
ぜひ、自分の狩猟スタイルに合ったスコープを見つけてください。
狩猟のギモン、YouTubeでお答えします
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