
猟銃の所持許可を取得し、いよいよ獲物を獲るための準備を始める狩猟初心者の人で、「実包(じっぽう)は火薬とどう違うのか」「カモを撃つ弾と、シカを撃つ弾は何が違うのか」「家に何発まで置いていいのか」…そんな疑問はないでしょうか?
実は、実包の購入・保管・管理には銃刀法や火薬類取締法といった法律が関わっており、このルールを知らずにいると、最悪の場合、許可の取り消しや罰則の対象となる可能性もあります。
そこで今回は、狩猟初心者が必ず知っておくべき「実包」の基礎知識から、用途別の選び方、法律に基づく正しい購入・保管手続き、そして管理台帳の書き方まで、網羅的に解説します。
法律を遵守しながら、自分の猟に最適な実包を自信を持って選択・管理できるようになれるよう、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「実包」とは?狩猟初心者が知っておくべき基礎知識

「実包」とは、狩猟や射撃で使われる「弾丸・火薬・雷管・薬莢(やっきょう)」が一体となった、発射可能な状態の弾薬のことを指します。
猟銃の所持許可を持つ者だけが、銃刀法・火薬類取締法に基づいた厳格な手続きを経て購入・所持できるものです。
「実包」と「弾丸」の違い
なかでも、狩猟初心者が混乱しがちなのが「実包」と「弾丸」の違いです。「弾丸」とは、発射されてターゲットに向かって飛んでいく金属の塊(散弾の場合は無数の粒)そのものを指します。
一方、「実包」は、その弾丸を発射させるための火薬や薬莢まで全てがセットになった「完成品」を指します。
法律では、この「実包」の所持や譲り受け(購入)に対して、厳重に制限と管理義務を課しています。
例えば、散弾銃の実包は、一般的にプラスチックや紙のケース(薬莢)の中に火薬とそれを抑えるワッズ、そして無数の小さな鉛や鉄の粒が入っています。
ライフル銃の実包は、真鍮(しんちゅう)製の薬莢に火薬が詰められ、先端に一つの大きな弾丸が装着されています。
これらすべてが「実包」を指し、手作り(ハンドロード)する場合を除き、銃砲店で購入するのはこの「実包」となります。
したがって、狩猟初心者はまず、「実包」とは単なる弾ではなく、火薬を含み発射能力を持つ法律上の厳格な管理対象品である、ということを認識する必要があります。
狩猟に使われる実包の種類と主な用途

狩猟に用いられる実包は、大きく分けて「散弾実包」「スラッグ弾」「ライフル実包」の3種類に分類されます。これらは、使用する銃と、獲物の種類によって厳密に使い分けられています。
獲物に対して不適切な実包を使用すると、獲物に無駄な苦しみを与える「半矢」になるだけでなく、弾が遠くまで飛びすぎたり、逆に威力が強すぎて獲物の可食部を大きく損傷させます。安全かつ効率的な狩猟を行うために、ターゲットに応じた実包の特性を理解することが不可欠です。
初心者が最初に所持する猟銃は多くの場合「散弾銃」で、「散弾実包」と「スラッグ弾」という2種類の実包を使い分けることができるのが特徴です。
① 鳥猟〜小型獣猟向けは散弾実包
散弾実包は、その名の通り、一つの薬莢の中に多数の小さな金属粒が詰められた実包です。発射と同時にこれらの粒が広範囲に飛び散るため、動きの速いカモやキジなどの鳥類、あるいはノウサギなどの小型獣の猟に適しています。
この小さな粒の「号数」が重要で、数字が小さいほど粒が大きく、大きくなるほど粒が小さくなります。主に40m以内の近距離での使用が前提となります。
初心者は、まず自分が獲りたい獲物を銃砲店に伝え、推奨される号数を選ぶことから始めましょう。
② 中型〜大型獣にはスラッグ弾(スラグ弾)
スラッグ弾は、散弾銃から発射するための、「一発の大きな弾丸」が入った実包です。散弾とは異なり、弾が拡散しないため、シカやイノシシといった中型〜大型獣猟に使用されます。
散弾銃しか所持できない狩猟歴10年未満のハンターが、大型獣猟を行う際の主要な選択肢となります。
散弾に比べて威力は格段に強いですが、弾道が放物線になるため、有効射程は70〜100m、最大射程700mとされます。
スラッグ弾にもフォスター型、サボット型など様々な形状があり、自分の銃との相性を考慮する必要があります。
③ 遠距離・大型獣向けのライフル実包

ライフル実包は、ライフル銃(銃身に螺旋状の溝=ライフリングが切られた銃)専用の実包です。弾丸に回転を加えることで、極めて高い直進安定性と命中精度を誇ります。
ヒグマやエゾシカといった大型獣を、100mを超える遠距離から狙撃するような猟で使用されます。
ライフル銃の所持は、銃刀法により、原則として猟銃所持許可から10年以上の経験がないと所持できません。
口径によって威力や弾道特性が全く異なり、非常に専門的な知識が求められる分野のため、将来的なステップアップを見据えて知っておくと良いでしょう。
実包を初めて買うときに迷わないポイント
狩猟初心者が初めて実包を購入する際は、①法律(使用許可銃)の確認、②獲物の特定、③銃砲店への相談の3ステップが重要です。
実包は、許可を受けている銃の「口径(ゲージ)」に適合し、かつ「使用目的(クレー射撃か、狩猟か)」に沿ったものしか購入・所持できません。また、前述の通り、獲物によって最適な弾は決まっています。
自分の判断で適当な実包を選ぶのではなく、必ず許可証と目的を明確にし、経験豊富な銃砲店のアドバイスを受けると安心です。
実包の購入前に知っておくべき手続きとポイント

実包を購入するためには、「猟銃用火薬類等譲受許可証(通称:譲受証)」を、住所地を管轄する警察署(公安委員会)で事前に取得する必要があります。
実包は火薬類取締法における「火薬類」に該当し、その譲り受けや購入は厳しく制限されています。
銃の所持許可とは別に、火薬類の購入許可が必要になるのです。無許可で譲り受けた場合、法律(火薬類取締法)により厳しく罰せられます。
主な手続きの流れは以下の通りです。
- 警察署へ申請
猟銃所持許可証、印鑑、手数料(都道府県により異なる)などを持参し、警察署の生活安全課に「猟銃用火薬類等譲受許可申請書」を提出します。
- 審査
申請者の欠格事由(前科や保管状況など)がないか審査されます。
- 許可証の交付
審査(数週間程度)を経て、問題がなければ「猟銃用火薬類等譲受許可証」が交付されます。この許可証には、年間に購入できる実包の上限数量が記載されています。
- 銃砲店での購入
銃砲店で実包を購入する際、この「譲受許可証」と「猟銃所持許可証」の2点を提示します。
- 許可証への記入
銃砲店は、販売した実包の種類と数量を、あなたの許可証に記入(消費枠を減算)します。
実包の購入は「銃の許可証」だけではできず、必ず「火薬の許可証」が必要であること、そしてその許可証には年間の購入上限枠があることを必ず理解しておかなければなりません。
実包の管理台帳の使い方と書き方

火薬類取締法に基づき、実包を譲り受け(購入)した者は、「火薬類消費等管理台帳(通称:実包管理台帳)」を備え付け、実包の受領・消費・残高を正確に記録する義務があります。
この台帳は、所持者がどれだけの実包を購入し、どれだけを射撃や狩猟で消費し、現在何発を所持しているかを明確にするための、法律で義務付けられた記録簿です。
警察官による立入検査(保管庫の確認など)の際には、この管理台帳の提示を求められ、実際の所持数と帳簿上の数が一致しているかを確認されます。
管理台帳には、以下の項目を「その都度」記載する必要があります。
- 日付:購入した日、または消費(使用)した日。
- 受(購入):銃砲店名、購入した実包の種類(12番 散弾 5号など)、購入した数量(発)。
- 払(消費):使用した目的(〇〇射撃場で標的射撃、〇〇山でカモ猟など)、消費した実包の種類、消費した数量(発)。
- 残高:その日の取引(購入または消費)後の、実包の種類ごとの現在の手持ち在庫数。
実包管理台帳の記録は、法律で定められた所持者の「義務」です。常に現物の在庫数と帳簿上の残高が一致するよう管理しましょう。
自宅・保管庫での実包保管に関するルール

実包の自宅保管は、火薬類取締法および関連法令により、「専用の保管庫」「保管数量の上限(原則800発)」「銃本体との別保管」といった厳格なルールが定められています。
実包保管の具体的なルールは以下の通りです。
- 専用保管庫
実包は、銃を保管するガンロッカーとは「別」の、施錠可能な「実包専用の保管庫(装弾ロッカー、火薬庫と呼ばれるもの)」に保管しなければなりません。
- 銃との別保管
銃本体と実包を同じロッカーに入れることは、盗難時に即座に使用されるリスクがあるため、固く禁じられています。
- 保管上限
自宅の専用保管庫で、火薬許可証に基づき保管できる実包の数量の上限は、原則として800発までと定められています。(※火薬類取締法施行規則)
- 無許可譲受票
警察が発行する「猟銃用火薬類等譲受許可証」とは別に、猟友会などが発行する「火薬類無許可譲受票」という制度があります。
これは、狩猟などで弾が必要になった際に、一定の条件(猟友会員であるなど)のもと、一時的に購入できる制度ですが、これによる1回の購入(譲受)上限は300発までとされています。
この300発も、当然ながら自宅での保管総数800発の枠内で管理する必要があります。
正しく知らないと実包の所持は罪にあたるおそれも
前述の購入手続き、管理台帳の不備、そして保管ルールに違反した場合、火薬類取締法または銃刀法違反に問われ、罰金や懲役、そして何より猟銃所持許可の取り消しといった、重い処分を受ける可能性があります。
「知らなかった」や「うっかりしていた」は通用しません。猟銃と実包の所持が許可されているのは、法律を正しく理解し、遵守するという前提の上に成り立っています。
実包の所持は、常に法律と規則を再確認し、厳格に管理する意識を早いうちから徹底して身につけましょう。
まとめ

「実包」は、法律によって厳格に所持数などを管理しなくてはいけない「火薬類」です。
実包の種類や用途の知識を知っておくことはもちろん、実包の購入や保管、管理台帳の運用といった法令を遵守しなければ、ハンターとして活動を続けることはできません。
定められたルールの範囲内で銃や実包を使用し、分からないことがあれば決して自己判断せずに警察署や、信頼できるハンター・銃砲店に相談してください。
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