
銃を選ぶ際、多くのハンターやシューターがまず考えるのが「自動銃」と「手動銃」のどちらを選ぶかという点でしょう。
これらの銃は、弾薬の発射と次弾の装填、そして使用済み薬莢の排出という一連の動作を、どのような方法で行うかという点で根本的に異なります。
この違いが、それぞれの銃の特性、メリット・デメリット、そして最適な活用シーンを決定づけます。本記事では、自動銃と手動銃の仕組みからそれぞれの特徴、そして用途に応じた選び方のポイントまでを詳しく解説します。
自動銃の仕組みと特徴:速射性と多弾性でリード
自動銃は、その名の通り、射撃動作の一部または全てが自動的に行われる銃を指します。
特に「セミオートマチック(半自動)」式が一般的で、狩猟や競技、警察・軍事など幅広い分野で利用されています。
①自動銃の動作原理:自動で次弾が装填される仕組み
自動銃の多くは、弾丸を発射した際の反動エネルギーや、銃身内のガス圧を利用して動作します。引き金を一度引くと弾丸が発射され、その際に発生するエネルギーが機関部へ伝わり、使用済みの薬莢が自動的に排出されます。
同時に、マガジンから新しい弾薬がチャンバー(薬室)へ装填され、次の射撃準備が完了します。この一連の動作が自動で行われるため、射手は次の弾を発射するために再び引き金を引くだけで済みます。
②自動銃のメリット:圧倒的な速射性と高い装弾数
自動銃の最大の利点は、その速射性にあります。手動で装填する必要がないため、非常に素早い連射が可能です。これにより、複数の獲物を連続して狙う必要がある場合や、競技で素早いターゲット切り替えが求められる場面で有利に働きます。
また、マガジンに比較的多くの弾薬を装填できるモデルが多く、高い装弾数も特徴です。これにより、再装填の頻度を減らし、連続した射撃機会を確保できます。
さらに、射撃時の反動エネルギーの一部が自動装填の機構に利用されるため、射手が感じる体感反動が比較的少ない傾向にあるのもメリットの一つです。
③自動銃のデメリット:ジャムや複雑なメンテナンス
自動銃のデメリットとしては、まず「ジャム」と呼ばれる弾詰まりや作動不良のリスクが挙げられます。
精密な機構を持つため、汚れや部品の摩耗、不適切な弾薬の使用などにより、正常に作動しなくなることがあります。特に自動式散弾銃では、ガス作動部にススが蓄積しやすく、これが排莢不良や装填不良の原因となるため、こまめなメンテナンスが不可欠です。
また、手動銃に比べて構造が複雑であるため、分解・清掃・組立てに手間がかかる場合があります。部品点数も多いため、故障時の修理も専門的な知識を要することが多いでしょう。究極の命中精度を追求する点では、シンプルな構造の手動銃(特にボルトアクション)に一歩譲るとされることもあります。
手動銃の仕組みと特徴:高い信頼性とシンプルな構造
手動銃は、射手自身が手動で次弾の装填と薬莢の排出を行う銃を指します。そのシンプルな構造からくる信頼性と堅牢性が大きな特徴です。
①手動銃の動作原理:手動での確実な装填・排莢
手動銃は、引き金を引いて弾丸を発射した後、射手自身がボルト(遊底)やポンプ、レバーなどを操作して、使用済みの薬莢を排出し、マガジンから次弾をチャンバーに装填します。この「一発撃つごとに手動で操作する」という点が、自動銃との最も大きな違いです。
②手動銃の種類:ポンプアクション、ボルトアクションなど
手動銃にはいくつかの主要なタイプがあります。
ポンプアクション式
先台(フォアエンド)を前後にスライドさせることで、次弾の装填と薬莢の排出を行う方式です。散弾銃で多く見られ、比較的素早い連射が可能で、堅牢かつ信頼性が高いのが特徴です。
ボルトアクション式
ボルト(遊底)を操作して次弾を装填・排出する方式です。ライフル銃に最も多く見られ、シンプルな構造と、発射時の振動が少ないことから、非常に高い命中精度を誇ります。精密射撃や長距離射撃において絶大な信頼を得ています。
レバーアクション式
機関部下部のレバーを操作して次弾を装填・排出する方式です。西部劇などで見られるタイプで、独特の操作感が魅力です。ライフル銃やカービン銃に採用されます。
中折れ式(単発式)
銃身と機関部が蝶番で「中折れ」する形で開き、手動で一発ずつ弾薬を装填・排出する最もシンプルな構造です。散弾銃やライフル銃の単発モデルに見られ、究極の信頼性と軽量さが特徴です。
③手動銃のメリット:高い信頼性と幅広い弾薬への対応力
手動銃の最大のメリットは、その高い信頼性にあります。シンプルな構造ゆえに部品点数が少なく、砂や泥などの悪条件下の環境でも故障しにくい堅牢性を持っています。メンテナンスも比較的容易で、長く使い続けることができます。
また、複雑な自動装填機構を持たないため、装弾の長さや火薬量による作動不良が起こりにくく、幅広い種類の弾薬に対応しやすいという利点もあります。特にボルトアクションライフルは、そのシンプルな構造が究極の命中精度をもたらし、精密射撃においては他の追随を許しません。
④手動銃のデメリット:連射性や操作性
手動銃のデメリットは、やはり連射性能の低さです。一発ごとに手動で操作する必要があるため、自動銃に比べて連射速度は格段に劣ります。複数の獲物を相手にする場合や、素早い追撃が必要な場面では不利になることがあります。
また、ボルト操作の際に銃を肩から外し、照準が一時的に中断されるため、次弾を素早く正確に撃ち込むには慣れと技術が必要です。自動銃に比べて体感反動が大きい傾向にあるのも、手動銃の特性の一つです。
狩猟における選択:獲物の種類、地域性、そして狩猟スタイルで銃を選ぶ
狩猟において自動銃と手動銃の選択は、狙う獲物の種類、狩猟を行う地域の特性、そしてどのような狩猟スタイルで臨むかによって大きく変わってきます。
例えば、北海道のような広大な地域でエゾシカなどの大型獣を狙う場合、ボルトアクションライフルが圧倒的に選ばれる傾向にあります。
これは、ボルトアクションが持つ極めて高い命中精度と信頼性が、一発で確実に仕留めることが求められる状況に最適だからです。広大なフィールドで獲物を静かに追跡し、遠距離から確実に一発を撃ち込む単独猟では、連射性よりも精度が重視されます。
一方、本州などで見られる10人規模の「巻き狩り(まき猟)」では、獲物を勢子(せこ:追い出し役)が追い立て、タツマ(待ち伏せ役)が狙撃します。
このように動いている獲物を狙う「ランニングショット」が必要な場面では、自動式ライフルや自動式散弾銃が有利となるシーンもあります。
動く獲物に対して素早く連射できるため、弾切れの心配が少なく、弾替えの手間も少ないことから、猟隊全体としての捕獲効率が高まる可能性があります。店長も、動く獲物を複数狙う際や、一発で仕留めきれなかった場合の迅速な追撃には、自動式の連射性が大きなアドバンテージになります。
まとめ
自動銃と手動銃は、それぞれ異なる射撃機構と特性を持っています。
自動銃は、速射性と多弾性に優れ、素早い連射や複数の獲物への対応に適していますが、構造が複雑でメンテナンスに手間がかかる場合があります。
対する手動銃は、そのシンプルな構造からくる高い信頼性と、特にボルトアクションでは圧倒的な命中精度を誇ります。ただし、連射性や操作性では自動銃に劣ります。
銃選びは、狩猟スタイル、狙う獲物、使用する環境、そして個人の習熟度によって最適な選択が変わってきます。北海道のような広大なフィールドでの精密な単独猟にはボルトアクションが、動く獲物を狙う巻き狩りなどでは自動銃が活躍する場面もあるでしょう。
シューティングサプライでは、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な銃選びをサポートいたします。銃器の特性を正しく理解し、安全に、そして責任を持って狩猟や射撃を楽しむために、ぜひ専門知識を持つスタッフにご相談ください。
狩猟のギモン、YouTubeでお答えします
シューティングサプライでは、YouTubeチャンネルも運用しています。
「鹿を仕留める時のコツはある?」
「銃の値段が違うと何が違うの?」
「そもそも銃砲店の店内ってどんな感じなの?」
上記のような、実際のお客様から寄せられた質問に対し、動画でお答えしています。他のチャンネルには中々ない、現場のギモンも解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
コメントを残す