ハンドロードを始めるならコレ!基本道具リストと選び方

銃砲所持者にとって、自分の手で装弾を作り出す「ハンドロード」は、射撃の精度を極め、コストを最適化するための奥深い技術です。

しかし、火薬や雷管といった危険物を扱うため、その作業には細心の注意と正しい知識が不可欠です。

このガイドでは、ハンドロードを安全かつ効率的に始めるために必要な道具一式と、それぞれの選び方、そして絶対に知っておくべき安全対策を徹底解説します。

初心者の方から、さらに精度を追求したい経験者まで、あなたのハンドロードライフをサポートする情報が満載です。

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ハンドロードを始めるならコレ!基本道具リストと選び方

ハンドロードとは、使用済みの薬莢(ケース)、弾頭(ブレット)、火薬(パウダー)、雷管(プライマー)を自分で組み合わせて実包(装弾)を製作する作業を指します。この作業は、市販の既成装弾では得られないいくつかの大きなメリットがあります。

最大の魅力は、ご自身のライフル銃や射撃スタイルに合わせた「オーダーメイドの弾」を作成できることで、これにより命中精度を劇的に向上させることが可能になります。また、火薬や雷管の種類、火薬量の微調整など、自分好みの弾をカスタマイズする奥深さもハンドロードの醍醐味です。

ただし、ハンドロードは火薬を扱う非常にデリケートな作業であり、火薬量の間違いなど、一つでも手順を誤れば銃が故障したり、大怪我につながる危険性があるため、完全な自己責任のもと、細心の注意を払って行う必要があります。

ハンドロードを始めるにあたり、まず揃えるべき主要な道具は以下の通りです。

①プレス (Press)

【用途】ハンドロード作業の中心となる機械です。薬莢の整形、雷管の挿入、弾頭の押し込みといった主要な工程をするための「ダイス」を固定する、土台といったものです。安定した作業のため、テーブルや専用の台にネジで固定して使用する卓上型が一般的です。

【選び方】多くのユーザーに信頼されているのは、アメリカのRCBS社製などの製品です。RCBSのプレスには、雷管を自動で装着する仕組みが備わっているモデルもあり、作業効率を高めることができます。

②ダイス (Dies)

【用途】プレスに取り付けて使用する、薬莢を加工するための部品です。使用済みの薬莢を規定の大きさに整形したり、火薬を詰めた薬莢に弾頭を押し込む際に使います。

【種類と選び方】

サイジングダイ (Sizing Die) 使い終わった薬莢を正しい寸法に整形するためのダイスで、中に針が付いているタイプが多いです。使用済み雷管を抜く役割も兼ねることがあります。
シーターダイ (Seating Die) 整形が終わった薬莢に弾頭を押し込むためのダイスで、こちらは針がないタイプです。頭の部品で弾頭の押し込み深さを調整します。
フルレングスダイ (Full Length Sizing Die)薬莢全体を整形する最も一般的なダイスで、特にボルトアクションライフル銃での使用に適しています。初心者が最初に選ぶべきダイスとして推奨されることが多いです。
ネックサイザーダイ (Neck Sizer Die)薬莢のネック部分(首の部分)のみを整形するダイスです。命中精度を極限まで追求する上級者が用いることが多いですが、セミオートライフルでは装填不良の原因となる可能性があるため推奨されません。
スモールベースダイ (Small Base Die)フルレングスダイよりもわずかに薬莢全体を絞り(縮め)、薬室が狭い自動ライフル銃(セミオートライフルなど)での使用に適しています。

③パウダーメジャー (Powder Measure)

【用途】火薬の量を大まかに測り、薬莢に素早く充填するための道具です。ハンドルを操作することで、設定した量の火薬を供給します。

【選び方】精密な計量ではなく、おおよその量を素早く入れるのに便利ですが、わずかなばらつきが生じるため、後述するスケールでの微調整が推奨されます。

④測り (Scale)

用途: 火薬の量を正確に測定するための計量器です。火薬量の正確な測定は、安全と命中精度に直結するため、非常に重要です。

【種類と選び方】

電子ばかり (Digital Scale)デジタル表示で簡単に火薬量を把握できます。手軽に使える反面、稀に電子部品の故障により表示が不安定になるケースもあるため注意が必要です。
天秤ばかり (Balance Scale)古典的でアナログなタイプですが、最も確実で精密な測定が可能とされています。風の影響を受けやすいため、静かで安定した環境での使用が求められます。

⑤プライミングツール (Priming Tool)

【用途】使用済み雷管を取り除いた薬莢に、新しい雷管を正確に挿入するためのツールです。

【種類と選び方】

ハンドプライムツール手で握って操作するタイプで、薬莢をセットし、ハンドルを握るだけでテンポよく作業ができます。プライミングを独立した工程として効率的に行いたい場合に便利です。
プレス付属タイププレスに雷管装着機能が備わっているものもあります。

⑥シェルホルダー (Shell Holder)

【用途】プレスやプライミングツールに薬莢をしっかりと固定するための小さな部品です。薬莢のリム(底部にある溝)を掴む形状をしています。

【選び方】ダイスと同様に、使用する薬莢の口径に合ったものが必要です。プレス用とプライミングツール用にそれぞれ一つずつ持っていると、作業の流れがスムーズになります。

⑦ケースルブ / ワックス (Case Lube / Wax)

【用途】薬莢全体を整形する際に、金属同士の摩擦による熱で薬莢がダイスに癒着したり、張り付いて抜けなくなったりするのを防ぐために使用する潤滑剤です。

【注意点】塗布が足りないと薬莢がダイスに焼き付いてしまい、取り除くのに大変な手間がかかるか、最悪の場合ダイスを損傷することもあります。逆に塗りすぎると薬莢がへこむ原因となるため、適量を塗布することが重要です。

ハンドロードの精度と安全性を高める!あると便利な追加道具

ハンドロードは基本道具だけでも可能ですが、さらに精度の高い弾を作成したり、作業の安全性や効率を向上させたりするために、以下のような追加道具があると非常に役立ちます。

①ケーストリマー(Case Trimmer)

薬莢は繰り返し使用すると、発射・整形を繰り返されることによって金属疲労でわずかに伸びてきます。

ケーストリマーは、伸びた薬莢の長さを削って規定の長さに整えるための道具です。薬莢の長さを正確に保つことは、弾が銃の薬室にスムーズに装填され、安定した弾道性能を発揮するために不可欠です。

②パウダートリクラー (Powder Trickler)

パウダーメジャーでおおよその火薬量を投入した後、スケールで計測しながら、このパウダートリクラーを使って火薬を少量ずつ追加し、目標の重量に正確に微調整します。

火薬量の精密な調整は、弾の命中精度に直結するため、精密射撃を目指す上では非常に重要なツールです。

③ノギス (Calipers)

リロードした弾(完成した実包)の全長を正確に測るために使用します。弾頭を薬莢にどれくらい押し込むか(シート量)は、銃への装填のスムーズさ、命中精度、そして腔内圧力に大きく影響します。

そのため、適切なシート量を事前に調べて正確に測定することが、安全かつ高精度な弾を作る上で必須とされています。

④天秤ばかり (Balance Scale)

先に基本道具としても挙げましたが、特に精度を追求する際には、電子ばかりよりも天秤ばかりの確実性と精密さが重要になります。電子ばかりは稀に表示がおかしくなる可能性があるため、最も信頼性の高い火薬量の測定を求める場合に推奨されます。正確な火薬量は、再現性と命中精度を保証する上で不可欠です。

⑤ケースタンブラー (Case Tumbler)

使用済みの薬莢に付着したススや汚れを洗浄するための専用洗浄機です。

クルミ殻や専用の研磨材(メディア)を入れて使用します。薬莢をきれいにすることで、小さな亀裂や損傷を目視で発見しやすくなり、危険な薬莢の使用を未然に防ぎ、安全性を高めます。また、見た目も美しく仕上がります。

⑥デバリング (Deburring Tool)

薬莢の口(マウス部分)は、加工や使用によってバリ(ギザギザした部分)が生じることがあります。面取りカッターは、このバリを取り除き、薬莢の口を滑らかに整えるための道具です。

バリがあると弾頭がスムーズに挿入されず、薬莢や弾頭の損傷、さらには命中精度への悪影響にもつながるため、重要な作業です。

⑦プライマーポケットクリーナー (Primer Pocket Cleaner)

使用済み雷管を取り除いた後、薬莢の雷管が収まる穴(プライマーポケット)の内部を清掃するツールです。特に、ポケットの奥にある小さな穴(フラッシュホール)の汚れを確認し、確実に除去することで、新しい雷管が安定して発火し、不発の原因を防ぎます。

⑧パウダーファンネル (Powder Funnel)

火薬を薬莢にこぼさずにスムーズに充填するための漏斗(じょうご)です。火薬のロスを防ぎ、作業台を汚すことなく効率的に作業を進めることができます。火薬の量を正確に計量した後、こぼさずに薬莢に入れるために重宝します。

ハンドロードを始める前に知っておくべき安全対策と注意点

ハンドロードは、火薬や雷管を扱う非常に危険を伴う作業であり、完全な自己責任のもと、細心の注意を払って行うことが不可欠ですし、そうあるべきです。人為的なミスは、銃の故障や大怪我につながる非常に危険な事態を引き起こす可能性があります。

完全自己責任の原則を理解する

ハンドロードは、銃砲刀剣類所持等取締法や火薬類取締法など、銃に関する諸々の法律に基づいて行いますが、ご自身で作成した弾に関するあらゆる結果(怪我や銃の故障、不発など)は、全てご自身の責任となります。

たとえ参考書や他者から教わった通りに作成しても、何か問題が発生した場合の責任は全て作成者本人にあります。この原則を深く理解し、常に慎重に作業に臨む必要があります。

火薬量の正確な管理と確認の徹底

火薬量の間違いは、ハンドロードにおける最も恐ろしいヒューマンエラーの一つです。 火薬量が多すぎれば薬室の変形(薬莢がちぎれることによるガス漏れ)や過大圧力による薬莢の張り付き、ボルトヘッドの損傷、少なすぎれば不発や、銃身内に弾が詰まる「停弾(ストック弾)」を引き起こす可能性があります。

特に停弾に気づかず次弾を発射すると、銃身が破裂し、大怪我をする危険性が非常に高まります。

多い分も危険ですが、さらに危険なのが「少ない時」です。

火薬量が少ない=薬莢の中のスペース(エアスペースといいます)が過大になります。仮に銃を真上に向けた状態でしか発射しない場合は影響が少ないですが、必ず水平状態か、水平に近い状態で使用しますよね。銃を水平状態にするということは装弾も水平状態になります。火薬量が著しく少ない場合は雷管の穴(フラッシュホール)よりも火薬量が下回り、雷管が発火した際に火薬に広範囲に降り注ぐことになります。本来は雷管から火薬のお尻側から先端側に向かって弾頭の進行方向に火薬が燃え進んでいくものですが、過少装填の場合、上記の通り広範囲に火薬が一気に燃焼します。そうなってしまうと薬室内で過大爆発が起こり、薬室破裂、ボルトロッキングも破損しロックの外れたボルト本体が高スピードで射手の顔方向に飛んできます。薬室が破裂するということは周辺ストック類も破裂破損、周辺を手で握っている場合が高いので握っている手は損傷、ボルトが射手の顔めがけて飛んできた場合、軽傷では済まされない怪我(死に至るケースや重度の後遺症が残るケースが非常に高いです)となります。

使用する火薬の「品番(燃焼速度)」も重要です。

火薬って違うの?、火薬ってぜんぶ同じでしょ?、といったお話をよく聞きます。違います。大きく違うのは燃焼速度です。それ以外にも違いはありますが、今回は燃焼速度についてお話します。

一般的にショットシェルやストレート薬莢は速燃速、マグナムまでのライフル薬莢は中間燃速、マグナムライフル薬莢は遅燃速、を使用します。速燃速の火薬をマグナム薬莢に使うと圧力が上がりすぎて銃を壊し、逆の場合は弾が加速できず銃身内で停弾します。日本に輸入されている火薬だけでもおおよそ20種類あり、世界にはそれの5倍以上種類が存在してます。近い特性でさほど変わらない物もあったりしますが、使用する品番を間違えますとこちらも重大な事故や死に係る怪我となりますので、十分に確認した上でチョイスするようにしましょう。どの速度のものを使ったらよいかわからない場合は各火薬メーカーの燃焼速度表や、その実包におけるチャージ量を記したデータ表を無料で確認できますので、まずはそちらを確認し、目安としましょう。

火薬を薬莢に入れる際は、必ず全ての薬莢に火薬が入っているか、そしてその量が著しく多くないか、または少なくないかを目視で確認しましょう。

量に不適切があれば、躊躇なくやり直してください。火薬量を測る際は、天秤ばかりが最も確実で精密な測定を保証します。パウダートリクラーやパウダーファンネルを活用し、正確かつ安全に火薬を扱ってください。

薬莢の状態確認と適切な処理

使用済みの薬莢は、繰り返し使うことで金属疲労による伸びや、スス汚れ、不自然な膨らみ、口部分の亀裂、錆び、大きなへこみなどが生じることがあります。

損傷している薬莢の使用は、破裂などの危険を伴うため、少しでも異常が見られた場合は必ず廃棄してください。ケースタンブラーなどで薬莢を洗浄し、状態を目視で入念に確認する習慣をつけましょう。薬莢整形時には、ケースルブやワックスの適切な塗布が、薬莢の固着やダイスの損傷を防ぐために不可欠です。

雷管(プライマー)の取り扱いと装着

新しい雷管を薬莢に挿入する際、ハンドプライミングツールなどを使用する場合、適切な「握る力」の調整が重要です。力が強すぎると雷管が奥に入りすぎて不発の原因となることがあります。

また、プライマーポケットの清掃も忘れずに行い、特に奥の小さな穴(フラッシュホール)に汚れがかかっていないかを確認することで、雷管の確実な発火を促し、不発のリスクを減らします。

弾頭のシート量(押し込み量)の厳密な管理

弾頭を薬莢にどれくらい押し込むか(シート量)は、銃への装填のスムーズさ、命中精度、そして腔内圧力に大きな影響を与えます。

シート量が不適切だと、銃に弾が装填されない、命中精度が著しく低下する、火薬量が安全圏でも異常に腔内圧力が上昇するといった不具合が生じる可能性があります。ノギスを用いて、事前に調べた推奨値に従い、正確なシート量を厳守しましょう。

ランドタッチ(弾頭がライフリングに接触した長さ)を専用工具で割り出し、使用する弾頭の素材によってランドタッチのままでOKか、それとも少し離した方が良いか、があります。基本的に鉛弾はランドタッチ0、銅弾はランドタッチより離す(深くシートする)のが一般的です。どれぐらい深くかはマッチングがありますので試行錯誤が必要です。

法律で定められた帳簿付けの義務

ハンドロードを行う場合、「火薬類取締法」に基づき、使用した火薬のグラム数と雷管の数を「猟用火薬管理帳簿」に記録する義務があります。

これは既成装弾の帳簿とは異なり、グラム単位での詳細な記録が求められます。面倒に感じるかもしれませんが、法律で定められた義務であり、厳守しなければなりません。エクセルなどの表計算ソフトを活用し、正確な記録を心がけましょう。

初期投資と情報収集の重要性

ハンドロードを始めるには、プレスやダイスなどの専用工具類が必要であり、RCBSのような一般的なメーカーのマスターキットでも総額10万円程度の初期投資がかかります。

数回試す程度であれば、既成装弾を購入する方が安価に済む場合もありますので、長期的な視点でハンドロードを続けるか検討してから道具を揃えましょう。また、ハンドロードに関する日本語の情報は限られているため、不明な点があれば、銃砲店や経験豊富な猟友会メンバー、射撃大会の参加者などから、直接アドバイスや指導を受けることが非常に有効です。

まとめ:ライフル選びと知識習得に役立つオート・セミオートの違い

ハンドロードは、ライフル銃の命中精度を追求し、自分好みの弾をカスタマイズできる、非常に奥深くやりがいのある作業です。しかし、火薬や雷管を扱う特性上、常に危険と隣り合わせであり、適切な道具の選定、正確な手順の遵守、そして何よりも徹底した安全管理が不可欠です。

今回ご紹介した基本道具や便利な追加道具を適切に選び、火薬量の正確な管理、薬莢の状態確認、雷管や弾頭の確実な装着、そして法的な帳簿付けの義務を遵守することで、安全にハンドロードを楽しむことができます。

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