
射撃や狩猟の後に残る薬莢。これらの使用済み薬莢は、適切な知識と技術があれば、再び射撃可能な弾薬として生まれ変わらせることができます。※一部の種類の薬莢は再使用不可のものもございます。ベルダン薬莢など。
このプロセスが「リローディング」です。本記事では、薬莢を再利用する主な方法であるリローディングに焦点を当て、そのメリット、必要な手順、そして何よりも重要な安全上の注意点について詳しく解説します。資源の有効活用とコスト削減に繋がるリローディングの世界を覗いてみましょう。
薬莢は再利用できる:リローディング(再装填)について
リローディングは、使用済みの薬莢に新しい雷管(プライマー)、火薬、弾頭を装填することで、弾薬を再生させる技術です。射撃愛好家やハンターにとって、コスト削減や弾薬の調整といったメリットがあります。
【リローディングのメリット】
- 新しい弾薬を購入するよりも、材料費を抑えることができます。特に、特定の口径やカスタム弾薬を使用する場合に有効です。
- 射撃の目的や銃の特性に合わせて、火薬の種類や量、弾頭の種類などを調整できます。
- 薬莢を繰り返し使用することで、廃棄物の削減に貢献できます。
- 弾薬の構造や装填に関する知識、精密な作業技術を習得できます。
リローディングは、火薬や雷管といった危険物を扱うため、非常に高い安全性が求められます。誤った知識や手順で行うと、重大な事故につながる可能性があります。
薬莢のリローディング方法
リローディングは、新品の薬莢を用いて一から弾薬を作り上げる「ハンドロード」とほぼ同じ手順で行えます。ここでは、リローディングに必要なパーツ、具体的な手順(散弾実包とライフル実包)、そして安全に作業を進めるための注意点について詳しく解説します。
①リローディングに必要な5つのパーツ
リローディングを行うには、以下の5つの主要なパーツを揃える必要があります。
弾頭(ブレット) | 標的に命中させるための金属製の弾頭。 |
薬莢(ブラス or ショットシェル) | 火薬や雷管、弾頭を保持する容器。散弾実包の場合はショットシェル、ライフル実包の場合はブラス(真鍮製)の薬莢を使用します。 |
火薬(ガンパウダー) | 弾頭を推進させるための火薬。種類や量が弾の性能に大きく影響します。 |
雷管(プライマー) | 火薬に点火するための起爆装置。 |
(散弾実包の場合)ワッズ | 散弾をまとめるためのカップ状の部品。 |
これらのパーツと、リローディング専用の機械を使用することで、使用済みの薬莢を新たな弾薬として生まれ変わらせることができます。
②散弾実包のリローディング:LEE「LOAD ALL2」を例に
リローディングは、散弾実包とライフル実包で手順が異なります。
LEE「LOAD ALL2」は、比較的安価で扱いやすいため、初心者にもおすすめです。
STEP1:使用済み雷管を抜く
サイジングスリーブを取り付けます。
薬莢を出っ張りのある箇所に置き、レバーを下げて使用済みの雷管を抜き取ります。
STEP2:リサイズ & 新しい雷管を装着する
新しい雷管を赤い丸の部分に置きます。
薬莢をセットし、レバーを下げます。この工程で、薬莢のロンデル部(雷管が収まる部分)のサイズを再利用可能な状態に整え、新しい雷管を挿入します。
※雷管の向きを間違えないように注意しましょう※
STEP3:火薬を入れる
赤いセレクターが「POWDER」側にあることを確認します。
中央のスペースに薬莢をセットし、レバーを引きます。
レバーが下がった状態で、赤いセレクターを「SHOT」側に動かします。
これで、事前に調整しておいた量の火薬が薬莢に入ります。
STEP4:ワッズを入れる
薬莢の上部にワッズを入れ、レバーを引きます。
※必ず火薬が入っていることを確認してからワッズを入れましょう。ワッズを入れ忘れて散弾を入れてしまうと、後で分別する際に手間がかかりますので注意が必要です※
STEP5:散弾を入れる
ワッズを入れたら、レバーを下げたままセレクターを「POWDER」側に戻します。
これで、目的のサイズに合わせた散弾が薬莢に入ります。
※スラグ弾の場合 この段階で散弾の代わりにスラグ(単発の弾)を入れます※
STEP6:先端を閉じる(スタークリンプの準備)
機械に向かって右から一個目の穴に薬莢をセットし、レバーを引きます。
これで薬莢の先端がすぼまり、スタークリンプ(散弾が飛び出さないように閉じる方法)を作る準備が完了します。
手前の穴は8枚クリンプ、奥の穴は6枚クリンプに対応しています。元の装弾のクリンプ数に合わせて選択しましょう。
STEP7:スタークリンプを閉じる
一番右の穴に薬莢をセットし、レバーを引きます。
装弾を確認し、スタークリンプがしっかりと閉じられていることを確認して完成です。
ハンドロードを行う上での重要な注意点(散弾・ライフル共通)
これからハンドロード(リローディング)を始める方は、以下の点を必ず理解しておいてください。
「ハンドロード作業」「ハンドロードした装弾」「それに関わる全ての事」に関しましては、完全に自己責任となります。
他人に教わった通りに作成したとしても、銃が故障したり、怪我をしたりした場合、その責任は全て作成した本人にあります。
教えてくれた人に責任は一切ありません。この点を十分に理解した上で、ハンドロードを導入するようにしてください。
薬莢再利用と法律
薬莢の再利用は、コスト削減や環境への配慮に繋がる一方で、関連する法律やマナーをしっかりと理解しておく必要があります。
これらを遵守しない場合、法的な罰則を受ける可能性や、周囲に迷惑をかけることに繋がりかねません。ここでは、薬莢の再利用に関わる法律と、趣味として楽しむ上でのマナーについて詳しく解説します。
薬莢の再利用に関する法律は、主に銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)によって定められています。しかし、その適用範囲や解釈は状況によって異なるため、注意が必要です。
①リローディング(再装填)に関する法規制
日本国内で弾薬のリローディングを行う場合、原則として様々な許可が必要となります。これは、完成した弾薬が銃刀法の規制対象となるためです。
- 許可の取得:リローディングを行うためには、居住地の都道府県公安委員会から火薬類製造許可(無許可製造の範囲を超える製造をする場合)または火薬類取締法に基づく火薬類譲受許可を得る必要があります。許可の要件や手続きは各都道府県によって異なるため、管轄の警察署(生活安全課など)に必ず確認してください。
- 無許可でのリローディング:1日における無許可製造の範囲を超えない数量(100個まで)なら、無許可製造として認められています。1日に100個以上製造する場合は上記の製造許可が必要です。火薬類無許可譲受(狩猟・有害駆除)での火薬類でも製造は可能です。
- 譲渡・販売の制限:リロードした弾薬を他人に譲渡・販売することも、許可なしには原則として禁止されています。
②空薬莢の所持・譲渡に関する法規制
使用済みの空薬莢自体は、一般的には銃刀法の規制対象となる「銃砲」や「弾薬」には該当しません。そのため、単純な空薬莢の所持や譲渡には、原則として許可は不要と解釈されています。
しかし、以下の点には注意が必要です。
- 大量の所持:社会通念上、過剰な量の空薬莢を所持している場合、その目的などを問われる可能性があります。趣味の範囲を超えた量と判断されると、警察の捜査対象となることもあり得ます。
- 悪用目的の疑い:空薬莢が犯罪に使用される懸念がある場合など、状況によっては警察の指導や捜査が入る可能性があります。
- 譲渡先の確認:空薬莢を譲渡する際は、同様の空薬莢を使用できる銃砲所持者と確認できる等、注意が必要と、リロード以外の使用の場合は悪用されない処置も必要と思います。
③廃棄に関する法規制
使用済みの薬莢を廃棄する場合、一般的には金属くずとして自治体のルールに従って処分することになります。
- 分別:他のゴミと混ぜず、金属類として分別して排出してください。
- 大量廃棄:大量の薬莢を廃棄する場合は、事前に自治体の清掃事務所などに相談し、適切な処理方法を確認してください。
④アップサイクル・DIYに関する法規制
空薬莢を素材としてアクセサリーやアート作品などを制作・販売する場合、基本的には銃刀法の直接的な規制は受けません。
しかし、以下の点には注意が必要です。
- 模倣品の製造:実在する弾薬や兵器のデザインを過度に模倣した製品を製造・販売することは、誤解を招く可能性があるため避けるべきです。
- 違法な改造:空薬莢を銃砲の一部に改造するなど、本来の用途から逸脱した利用は法律に触れる可能性があります。
法律の解釈は状況や担当機関によって異なる場合があります。不明な点や判断に迷う場合は、必ず管轄の警察署や弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
まとめ
この記事では、使用済み薬莢を再利用し、新たな弾薬として蘇らせる「リローディング」の基本的な手順と重要な注意点について解説しました。
リローディングは、射撃愛好家やハンターにとって、経済的なメリットだけでなく、自身の使用する弾薬を細かく調整できるという魅力があります。しかし、火薬や雷管といったデリケートな材料を扱うため、安全管理が何よりも重要です。
始めるにあたっては、関連する法律を遵守し、信頼できる情報源から正しい知識と技術を習得することが不可欠です。この記事が、安全かつ責任あるリローディングへの第一歩となることを願っています。資源を有効に活用し、より深く射撃の世界を楽しむために、リローディングの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
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