
射撃競技や狩猟シーンで「思うように標的に当たらない」「距離によって散弾の広がりをどう調整すればいいのか」と悩んだことはないでしょうか。散弾銃を扱う上で、避けて通れないのが「チョーク」の知識です。
チョークの選択一つで、同じ銃、同じ実包でも、獲物を仕留められる距離や範囲が劇的に変わります。この記事では、国内のハンターが知っておくべきチョークの基礎知識を、専門的な視点からわかりやすく解説します。
散弾銃に使うチョークの仕組みと重要性

画像引用:レミントン M11-87スポーティングクレー 12‐28”交換チョーク式
散弾銃の性能を語る上で、チョークは極めて重要なパーツです。まずは、チョークが弾道に対してどのような物理的な役割を果たしているのか、その根本的な仕組みから整理していきます。
散弾の広がりを制御するチョークの仕組み
散弾銃にチョークを取り付けることで、銃口付近をわずかに絞り、発射される散弾の広がりをコントロールすることできます。
水道のホースの先を指で絞ると水が遠くまでまとまって飛ぶのと同じ様に、チョークの絞りが強いほど散弾はまとまって遠くまで届き、絞りが弱いほど近距離で広く拡散します。このように、物理的な収束を利用して弾道を制御するのがチョークの基本原理です。
獲物との距離に合わせてパターンを調整する重要性
狩猟の成功率を高めるためには、獲物との距離に合わせて適切なチョークを選択し、弾丸の密度を最適化することが極めて重要です。
遠距離で絞りの弱いチョークを使うと、散弾が広がりすぎて半矢の原因となります。
散弾銃に使うチョークの種類とそれぞれの特徴

チョークには、銃身と一体化したものから付け替え可能なものまで複数のタイプがあり、それぞれに一長一短があります。ここでは、交換式と、今なお愛される固定式の違い、そして具体的な絞りの規格について詳しく解説します。
固定式と交換式の違いとメリット
現在流通している散弾銃には、大きく分けて「固定式」と「交換式」の2タイプが存在します。
現代の主流は、銃口の内側にネジが切ってあり、専用のパーツを付け替える「交換式」で、一本の銃身であらゆる狩猟シーンに対応できる汎用性が最大のメリットです。
一方で銃身とチョークが一体化している「固定式」は、古いモデルに多い形式ですが、クレー射撃のトラップでは固定式がよく利用されます。
絞り具合による分類
チョークの種類を理解する上で最も重要なのは、絞りの規格です。
一般的に、絞りの強い順に「フル」「インプ・モデ」「モデ」「インプ・シリンダー」「シリンダー」と呼ばれます。フルチョークは遠距離の射撃に適しており、シリンダーは近距離やスラッグ弾の発射に向いています。これらの種類を使い分けることで、標的に対して最も致命的な打撃を与えられる密度を維持することが可能になります。
スラッグ弾やスキート競技用の特殊なチョーク
標準的な絞り以外にも、特定の用途に特化した特殊なチョークが存在します。
例えば、大物猟で使用されるスラッグ弾専用のチョークには、ライフリングが刻まれているチョークがあり、弾頭に回転を与えて精度を高める効果があります。
また、スキート射撃用には銃口部が逆に広がっている「ネガティブ・チョーク」なども存在し、至近距離で瞬時に散弾を拡散させる構造になっています。
散弾銃におけるチョークの見分け方

いざ現場でチョークを交換しようとした際、どれがどの絞りか分からなくなっては困ります。ここではチョークの規格を確認できる刻印と切り抜き(ニッチ)について解説します。
アルファベット表記(F, M, IC等)
「猟銃 チョーク 見分け方」として最も一般的なのが、チョークの側面に刻印されたアルファベットを確認する方法です。
多くの場合、以下の略称が使われています。
- F (Full):フルチョーク(一番の絞り)
- IM (Improved Modified):インプ・モデ(3/4絞り)
- M (Modified):モデ(中間の絞り)
- IC (Improved Cylinder):インプ・シリンダー(1/4絞り)
- CL / CYL (Cylinder):シリンダー(絞りなし)
交換式チョークの場合、これらの文字が外側から見える位置、あるいはネジ部に刻まれています。中古銃などで刻印が摩耗している場合は、ノギスで銃口の内径を測定し、元のボア径との差を算出することで判断できます。
銃口の切り欠きの数
刻印が読みにくい場合や、銃に装着した状態で判断するための指標として、銃口先端にある「切り欠き(ノッチ)」の数で見分ける方法があります。
世界的な共通規格として、切り欠きの数が少ないほど絞りが強く、多いほど絞りが弱いことを示しています。
- I (1本):フルチョーク
- II (2本):インプ・モデ
- III (3本):モデ
- IIII (4本):インプ・シリンダー
- IIIII / なし (5本または刻印なし):シリンダー
このノッチを確認すれば、セッティングを即座に判別できるので実用的です。
散弾銃のチョークを交換する方法と注意点

画像引用:ベレッタ ホワイトグリス
交換式チョークは非常に便利ですが、一歩間違えれば銃身を痛めたり、最悪の場合は破裂事故に繋がったりする危険も孕んでいます。安全にチョーク交換するための方法と注意点を解説します。
チョークレンチを使用した正しい交換手順
交換式チョークの脱着には、必ず専用のチョークレンチを使用してください。
正しい手順は、まず銃の脱包を完全に確認した後、チョークレンチをチョーク先端の溝にしっかりと噛み合わせ、反時計回りに回して外します。装着時は逆の手順で行いますが、この際、指の力だけで止まるところまで回し、最後にレンチで軽く増し締めをするのがコツです。力任せに締めすぎると、熱膨張で外れなくなる恐れがあるため、適切なトルク感を覚えましょう。
ネジ山の固着を防ぐ方法と専用グリス
チョークの交換時に最も注意すべきトラブルが、ネジ山の固着です。
発射時の高熱と圧力により、チョークのネジ部は過酷な環境にさらされます。これを防ぐためには、装着前に必ずネジ山を清掃し、専用のグリスを薄く塗布することが効果的です。
事故を防ぐためのチェック事項2つ
チョークの取り扱いミスは、時に銃身の破裂といった重大事故につながります。
第一に、チョークが緩んでいないかを必ず確認しましょう。射撃を繰り返すと振動でチョークが浮いてくることがあり、その隙間に散弾が入り込むと銃身が膨らんだり破裂したりします。
第二に、異なるネジピッチのチョークを流用しないことです。ネジのピッチのわずかなズレが事故を招く恐れがありますので、必ずその銃専用の規格であることを確認して使用しましょう。
【狩猟シーン別】散弾銃に使うチョークの選び方

理論がわかったところで、次は実際のフィールドでどう選ぶかです。鳥猟から大物猟、さらにはクレー射撃まで、状況に応じた最適なセッティングの目安をご紹介します。
鳥猟に適したチョーク設定
日本の鳥猟においては、獲物の種類と射撃距離に応じたチョークの使い分けるのが定石です。
例えば、開けた場所で警戒心の強いカモを遠くから狙う場合は「フル」または「インプ・モデ」がおすすめ。一方で、林の中でのヤマドリやキジの猟では、出会い頭の近距離射撃が多くなるため「モデ」や「インプ・シリンダー」が適しています。
上下二連銃であれば獲物との平均的な交戦距離を予測し、最初の1発目と2発目でチョークの絞りを変えるテクニックもあります。
大物猟とスラッグ弾の相性
イノシシやシカを狙う大物猟でスラッグ弾を使用する場合、チョークの選択は命中精度と安全性に直結します。
原則として、スラッグ弾には「シリンダー」または「インプ・シリンダー」のような絞りの弱いチョークを使用します。フルチョークのような強い絞りでスラッグ弾を発射すると、弾頭が無理に圧縮され、銃身に過度な負荷がかかるだけでなく、弾道が不安定になり命中精度が著しく低下します。
トラップ・スキート射撃のセッティング
狩猟のオフシーズンに行うクレー射撃競技でも、チョークの知識は欠かせません。
トラップ射撃は、自分から遠ざかっていくクレーを撃つため、基本的にはフルやインプ・モデのような絞りの強いチョークを使用します。
一方、スキート射撃は左右から飛来するクレーを近距離で迎え撃つため、絞りの弱い専用の「スキートチョーク」や「シリンダー」を使用します。競技の特性に合わせたセッティングを学ぶことは、そのまま狩猟技術の向上にもつながります。
まとめ
散弾銃のチョークは、弾道と命中精度を左右する重要なオプションパーツです。この記事でご説明した要点を以下にまとめます。
- 仕組み:銃口を絞ることで散弾のパターンをコントロールする。
- 見分け方:刻印やノッチの数で絞り具合を判断する。
- メンテナンス:専用グリスを使用し、緩みや固着を未然に防ぐ。
- 選び方:鳥猟なら距離に応じて絞り、大物猟のスラッグ弾なら開放が基本。
自分の猟法に最適なチョークを見極め、正しくメンテナンスを行うことは、獲物に対する敬意であり、安全な狩猟を実現するためのハンターの責務です。ぜひこの記事を参考に、愛銃のポテンシャルを最大限に引き出してください。
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